大山の山麓に広がる火山灰土壌『黒ぼく』の大地で
栽培がはじまってから100年以上

先人たちのたゆまぬ努力と多くの消費者に支えられ、全国屈指のスイカの産地に成長した
取材:2018年5月  放送:2018年6月
 
喧騒とした大阪から特急列車で倉吉まで 3時間。
そこから車で西に走った先にある小さな町にたどり着いた。
鳥取県北栄町。東西に延びる県の中央部に位置する。日本海に面し、背後には、奈良時代から信仰の山として崇められてきた秀峰・大山(だいせん)がそびえる。
 
この町の自慢が、全国にその名をとどろかせる「大栄すいか」。町には巨大なすいかの選果場があり、最盛期の 6月~ 7月中旬には、連日約 5万個のすいかが全国各地に出荷される。
 
「大栄(だいえい)」とは平成の大合併で 2007年に北栄町が誕生する前にあった町の名だ。「大栄町」と「北条町」が合併し、「北栄町」となった。
その大栄町もルーツを遡ると、昭和 301955)年に「大誠村」と「栄村」が合併して「大栄町」となっている。合併の度に、双方の町村名から漢字一文字ずつを仲良く出し合って、新たな地名にしている。その歴史を見ると、先人がつけた名前への敬意と、「和をもって貴しとなす」意識の強い土地柄に見える。農業を主産業とする地域らしい気風がありそうだ。
 
国産すいかの頂点に立つといっても過言でない、名産品「大栄すいか」。
なぜ鳥取の地で出来るのだろう?
 

100年の伝統と聞いて、


その疑問に答えてくれたのは、地元のすいか農家の団体、大栄西瓜組合協議会の山脇篤志会長(48)。毎年 1万個のすいかを作る山脇さんが、畑の土を触りながら教えてくれた。
  
「この土は、大山(だいせん)の火山灰土なんですよね。
保水性と保肥性が良いんです」
 
大山は、約 100万年前から 2万年前頃まで、火山活動が続いた。その過程で、周囲約 30㎞四方に火山灰が堆積し、水はけのよい肥沃な大地が形成された。
この『黒ぼく』よ呼ばれる大地は、有機物を多く含み、病気や害虫に対して丈夫な根を生育させる特徴がある。
 

大山の山麓に広がる火山灰土壌『黒ぼく』の大地で
栽培がはじまってから100年以上。
先人たちのたゆまぬ努力と多くの消費者に支えられ、
全国屈指のスイカの産地に成長しました。

 
この力のある土と寒暖差の大きな気候が、糖度が高く大変甘い、大玉でシャリ感たっぷりの『大栄西瓜』を育みます。
 そこで作られる大栄すいかは、とにかく大きい。そして甘い!
 
取材に訪れた大畑大介さんの第一声は…
「でかい!」
 
その秘密は、1つの苗に出来る4個の実のうち2つを惜しげもなく間引きし、
残った 2つを、大玉のすいかに育てるのだ。
更に、収穫の2週間前からは、水やりを絶ち、果実内の余分な水分を減らし、すいかの糖度を高めて、シャリシャリの食感を生み出している。
 
山脇会長は、得意げに語った。
 
「一口食べて美味い、というだけでなくて、
皮際まで食べて美味しい!これが一番の売りですよね」
 
全国各地の農家では、多くで高齢化が進み、
後継者や若い担い手不足に悩んでいる。
だが、大栄すいかの生産者は、皆若い。
これには驚いた。
 
 「皆すいか農家に生まれ育って、親の姿みて、
 やっぱ楽しいって感じるんじゃないですかね。すいか美味しいし。」
43歳のすいか農家)
 
 

〈取材・記事〉 榛葉 健
毎日放送「産直ダイスケ」のプロデューサーでドキュメンタリー制作者。
阪神・淡路大震災では特別番組を
15本制作し、その1作「with若き女性美術作家の生涯」は、日本賞・ユニセフ賞、アジアテレビ賞など受賞。世界最高峰チョモランマに3度撮影に行き2年間極限の自然を撮影した「幻想チョモランマ」は海外でも放送された。
テレビやラジオの制作をしながら、東日本大震災の被災地に通い続けて、私費で映画「うたごころ」シリーズを制作。国内外で上映の輪が広がる。福島の原発事故で被害を受けた畜産農家の苦闘を5年間記録した新作「被ばく牛と生きる」は、ドイツやアメリカの映画祭で受賞し、国内でも平和・協同ジャーナリズム賞や農業ジャーナリスト賞を受賞。
2017年に立ち上げた「産直ダイスケ」では、日本各地で農業・漁業に奮闘する人々の情熱を取材し、絶品の生鮮品を紹介している。